介護の資格が転職で有利になる最大の理由は、給与より先に「応募できる求人の範囲」が変わるからです。訪問介護は資格がなければ従事できず、実務者研修を修了すればサービス提供責任者の対象になります。資格なしから介護福祉士までは、実務経験3年+実務者研修を含めておおむね3〜4年の道のりです。
この記事でわかること
- 介護の資格が転職で有利になる本当の理由(給与差より先に効くもの)
- 資格なし・初任者研修・実務者研修・介護福祉士の4段階で働ける職場がどう変わるか
- 2024年4月から義務化された認知症介護基礎研修の位置づけ
- 介護福祉士国家試験の実務経験ルートの要件と最新の合格率
- 資格をいつ取るかの判断(先に取る/働きながら取る)と、費用支援の探し方
公的情報源: 厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」(参照)/厚生労働省「第38回介護福祉士国家試験合格発表について」(参照)/「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号・参照)/厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」(参照)/公益財団法人 介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」(参照)
働きながら資格を取れる求人は実際にあります。費用支援の条件を先に見ておくと、遠回りを避けられます。
結論を先に整理します
「介護の資格は転職に有利か」という問いへの答えは、条件付きで「はい」です。ただし有利さの中身は、多くの人が想像するものと違います。
手当が数千円上がるという話の前に、そもそも応募できる求人の種類が変わる。これが制度上の最も大きな効果です。
- 訪問介護は資格が必須。訪問介護員52万612人に無資格の区分は存在しない(厚労省・令和6年調査)
- 施設介護は無資格でも入職できるが、2024年4月から認知症介護基礎研修が義務
- 実務者研修を修了すると、サービス提供責任者の対象になり、介護福祉士の受験要件も満たせる
- 介護福祉士は実務経験3年(従事日数540日以上)+実務者研修で受験可能。第38回の合格率は70.1%
- 資格を取る順番より、働ける職場が増える段階を先に踏むほうが選択肢は早く広がる
資格が転職で有利になる本当の理由
介護の資格の効果は、3つの層に分けて考えると整理できます。給与はいちばん外側の層にすぎません。

- 第1層:応募できる求人の範囲 訪問介護は資格が要件。資格の有無で選べる職場の種類そのものが変わる
- 第2層:担える役割 サービス提供責任者・計画作成・喀痰吸引等、資格に紐づく職務がある
- 第3層:給与と手当 資格手当・処遇改善加算の配分。ただし事業所差が大きい
第1層と第2層は法令で決まっているため、事業所が違っても結論が変わりません。一方で第3層は事業所ごとの制度に左右されます。
だから「資格を取れば給料が上がるか」ではなく、「資格を取ると、どこで働けて何ができるようになるか」で考えるほうが判断を誤りません。資格別の給与差そのものは、別記事で厚労省の数字を分解しています。

4段階で「働ける場所」がどう変わるか
資格なしから介護福祉士まで、段階ごとに何が開くのかを制度ベースで並べます。

資格の段階と、そのとき働ける場所・担える役割
| 段階 | 施設介護 | 訪問介護 | 担える役割 |
|---|---|---|---|
| 資格なし | 就業可(認知症介護基礎研修が義務) | 不可 | 身体介護・生活支援の補助 |
| 介護職員初任者研修 | 就業可 | 就業可 | 訪問介護員として単独訪問 |
| 実務者研修 | 就業可 | 就業可 | サービス提供責任者の対象 |
| 介護福祉士 | 就業可 | 就業可 | 上記+指導的役割・国家資格の証明 |
資格なしでも施設なら入職できる
特別養護老人ホーム、デイサービス、グループホームなどの施設・通所サービスには、介護職員の資格要件がありません。無資格・未経験から入職する道は制度上開いています。
ただし2021年度の介護報酬改定で、医療・福祉関係の資格を持たない介護従事者に認知症介護基礎研修を受講させることが事業者に義務づけられました。3年間の経過措置は令和6年3月31日で終了し、2024年4月から本格適用されています(新規採用者は採用後1年の猶予)。
免除されるのは、介護福祉士・介護職員初任者研修修了者・実務者研修修了者・看護師・社会福祉士など。つまり「無資格で入る」は「入職後に研修を受ける」とほぼ同義になりました。
未経験からの入り方については、こちらで整理しています。
初任者研修で訪問介護の扉が開く
いちばん効果が大きい1段目がここです。指定居宅サービス等基準(平成11年厚生省令第37号)第5条の「訪問介護員等」は、介護福祉士または介護保険法施行令で定める研修の修了者に限られます。
厚生労働省の調査で、訪問介護員52万612人の資格構成を見ると次のとおりです。
訪問介護員の資格構成(令和6年10月1日現在)
| 資格 | 人数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 介護福祉士 | 260,274人 | 50.0% |
| 介護職員初任者研修修了者 | 195,307人 | 37.5% |
| 実務者研修修了者 | 40,539人 | 7.8% |
| 旧ホームヘルパー1級課程修了者 | 9,640人 | 1.9% |
| 旧介護職員基礎研修課程修了者 | 4,890人 | 0.9% |
| 生活援助従事者研修修了者 | 1,573人 | 0.3% |
無資格の欄がありません。 訪問介護の事業所は全国37,264か所あり、介護分野で最大の受け皿。初任者研修を修了するだけで、この選択肢がまるごと増えます。
しかも訪問介護員が不足していると回答した事業所は83.4%(介護労働安定センター・令和6年度調査)で、調査対象7職種のうち最も高い。資格を持つ人にとって、需給の面でも有利な分野です。
実務者研修で役割が変わる
実務者研修は、初任者研修の上位に位置づけられる課程です。転職の観点で重要なのは2点。
- サービス提供責任者の対象になる:省令第5条第4項はサ責を「介護福祉士その他厚生労働大臣が定める者」と定めており、実務者研修修了者などが該当する
- 介護福祉士の受験要件を満たせる:実務経験ルートでは実務者研修の修了が必須
サービス提供責任者は、訪問介護計画の作成や訪問介護員への指導を担う役割。利用者40人ごとに1人以上の配置が必要(省令第5条第2項)なので、事業所には必ずポストがあります。
介護労働実態調査では、サ責の採用率8.3%・離職率8.3%はいずれも調査対象7職種の中で最も低い水準でした。定着している職種であり、そのぶん求人は限られるとも読めます。
また実務者研修の課程には医療的ケアが含まれ、所定の実地研修を経ることで喀痰吸引等の実施につながります。医療的ケアに対応できる人材は、施設側の体制上も重宝されます。
実務者研修や初任者研修は、費用を事業者が負担する制度を使えば自己負担を抑えられます。条件を先に確認しておくと動きやすくなります。
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介護福祉士までの道のりと最新の合格率
介護福祉士は介護分野で唯一の国家資格です。転職市場での評価も、ここで一段変わります。

実務経験ルートの要件
働きながら目指す場合の要件は次の2つです。
- 実務経験3年以上:従事日数540日以上。特養・デイサービス・訪問介護など、対象となる施設・事業での勤務が算定される
- 実務者研修の修了:受験申込までに修了していることが必要
無資格からのスタートなら、初任者研修(一般に1〜4か月程度)→現場で実務経験を積む→実務者研修→受験、という流れ。おおむね3〜4年で国家資格に届く計算です。
第38回試験の合格率は70.1%
厚生労働省の発表によると、令和8年1月25日実施の第38回介護福祉士国家試験は、受験者78,469人・合格者54,987人で合格率70.1%でした。第37回(受験者75,387人・合格者58,992人)の78.3%から8.2ポイント低下しています。
第38回からは試験科目が3つのパートに分けられ、パートごとに合否を判定する仕組みが導入されました。全体の総得点が基準に届かなくても、基準を満たしたパートは合格として扱われ、その資格は翌年・翌々年まで有効。再受験時に不合格のパートだけを選ぶこともできます。
働きながら受験する人にとって、1年で全科目を仕上げなくてよくなったという点は実務上の変化として大きい部分です。
有資格者比率は職場によって違う
厚労省の調査から、資格が「当たり前」の職場とそうでない職場が見えます。
職場別・介護職員(訪問介護員)に占める介護福祉士の割合(令和6年10月1日現在)
| 職場 | 介護職員数 | うち介護福祉士 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 介護老人福祉施設(特養) | 299,123人 | 185,188人 | 61.9% |
| 訪問介護 | 520,612人 | 260,274人 | 50.0% |
| 通所介護(デイサービス) | 221,372人 | 104,640人 | 47.3% |
有資格者比率が高い職場は、教わる相手がいる環境でもあります。資格取得を目指すなら、周囲の有資格者比率は職場選びの一つの手がかりになります。
資格はいつ取るのが有利か
「先に取ってから転職する」と「働きながら取る」。どちらが有利かは、今の状況で変わります。
先に資格を取ってから動いたほうがよい人
- 訪問介護で働きたい:資格が要件のため、修了していないと応募自体ができない
- すぐに転職せず準備期間がある:離職中や就業前なら、修了してから応募したほうが選択肢が広い
- 教育体制が弱い職場しか選べそうにない:基礎を先に入れておくと現場での立ち上がりが早い
- 実務経験3年が見えている:受験要件を満たしてから動くと、条件交渉の材料になる
働きながら取るほうが現実的な人
- 収入を止められない:資格取得の費用支援制度を持つ事業者を選ぶと自己負担を抑えられる
- 介護が自分に合うか確かめたい:施設介護なら無資格で始められる(認知症介護基礎研修は入職後)
- 実務経験を早く積み始めたい:介護福祉士の受験要件は実務経験3年。始めるのが早いほど到達も早い
- 座学より現場で覚えたい:研修の内容が、実務と結びついたほうが定着しやすい
働きながら取る場合、資格取得支援制度の条件を必ず文書で確認してください。「一定期間の勤務を条件に費用を負担する」という設計が一般的で、途中で退職した場合の扱いが定められていることがあります。
ケアマネジャー・その他の資格をどう位置づけるか
介護福祉士の先には、介護支援専門員(ケアマネジャー)などの道があります。ただし仕事の中身が変わる点は理解しておきたいところです。
- 介護支援専門員(ケアマネジャー):介護福祉士等として5年以上(900日以上)の実務経験を経て実務研修受講試験を受験。ケアプラン作成が主業務となり、身体介護から離れる
- 認知症介護実践者研修:認知症ケアの実践力を高める研修。グループホームの計画作成担当者に求められる研修の一つ
- 喀痰吸引等研修:所定の研修と実地研修を経て、喀痰吸引・経管栄養の実施につながる
- 社会福祉士:相談援助の国家資格。生活相談員や地域連携の職に道が開ける
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」でも、介護支援専門員や社会福祉士の平均給与額は介護福祉士より高い水準です。ただしこれは職務そのものが相談援助やケアプラン作成に移るためであり、介護職として同じ仕事をしながら手当だけが上がるという読み方はできません。
現場でケアを続けたいのか、調整役に回りたいのか。資格選びは、その方向を決めてからで十分間に合います。
よくある質問
Q1:介護の資格がなくても転職できますか?
施設・通所サービス(特養、デイサービス、グループホームなど)には介護職員の資格要件がないため、無資格でも入職できます。ただし2024年4月以降、医療・福祉関係の資格を持たない介護従事者は認知症介護基礎研修の受講が義務(新規採用者は採用後1年の猶予)。一方で訪問介護は資格がなければ従事できません。
Q2:転職でいちばん役立つ介護の資格は何ですか?
段階によって答えが変わります。まだ資格がないなら介護職員初任者研修が最も効果的で、訪問介護という全国37,264事業所の選択肢が新たに開きます。すでに現場経験があるなら実務者研修。サービス提供責任者の対象になり、介護福祉士の受験要件も満たせます。給与だけで比べず、応募できる求人の範囲で判断してください。
Q3:介護福祉士になるには何年かかりますか?
実務経験ルートの場合、実務経験3年以上(従事日数540日以上)と実務者研修の修了が受験要件です。無資格から始めると、初任者研修(一般に1〜4か月程度)を経て現場で3年、その間に実務者研修を修了する流れとなり、おおむね3〜4年が目安になります。福祉系高校ルートや養成施設ルートもあります。
Q4:介護福祉士国家試験の合格率はどれくらいですか?
厚生労働省の発表によると、令和8年1月25日実施の第38回試験は受験者78,469人・合格者54,987人で合格率70.1%でした。第37回は78.3%で、8.2ポイントの低下。第38回からは試験科目が3パートに分かれ、パートごとに合否を判定する仕組みが導入され、合格したパートは翌年・翌々年まで有効です。
Q5:資格の費用は自己負担ですか?
事業者が費用を負担する制度を設けている求人があります。設計は事業者ごとに異なり、「一定期間の勤務を条件に費用を負担する」形が一般的です。途中で退職した場合の扱いが定められていることがあるため、条件は文書で確認してください。都道府県や自治体による助成制度が利用できる場合もあります。
Q6:資格を取れば給料は必ず上がりますか?
必ず上がるとは言えません。資格手当の有無や金額は事業所ごとに決まり、処遇改善加算の配分方法も事業所裁量です。厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」では資格別の平均給与額に差がありますが、これは勤続年数や職位の違いも含んだ平均値です。同じ資格でも事業所によって扱いが違うため、求人票の資格手当欄と配分方法を確認してください。
まとめ:資格は「給料」より先に「選べる場所」を変える
介護の資格が転職で有利になる仕組みを整理します。
- 資格の効果は①応募できる求人の範囲 ②担える役割 ③給与の3層。法令で決まる①②が確実に効く
- 訪問介護は資格が必須。訪問介護員52万612人に無資格の区分はなく、全国37,264事業所が対象外になる
- 施設介護は無資格でも入職できるが、2024年4月から認知症介護基礎研修が義務
- 実務者研修でサービス提供責任者の対象になり、介護福祉士の受験要件も満たせる
- 介護福祉士は実務経験3年+実務者研修で受験。第38回の合格率は70.1%で、パート合格制度が導入された
介護の資格は、持っていると評価される免許というより、扉の鍵に近いものです。初任者研修という1本目の鍵で訪問介護が開き、実務者研修でサービス提供責任者への道が開く。
だからこそ、「どの資格が有利か」ではなく「自分が働きたい場所に、どの鍵が要るか」から逆算するのが確実です。そのうえで、費用を支援してくれる職場を選べば、時間もお金も節約できます。
働きながら資格を取れる求人は、条件を確認するところから始められます。自己負担なく進められる形があるかを見ておいてください。
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免責事項
※本記事は執筆時点で公表されている厚生労働省の統計・法令・通知等の公開情報をもとにした整理であり、個々の研修実施機関の要件・費用、事業所の資格手当の扱いとは異なります。資格要件・試験制度・研修の義務化に関する取り扱いは制度改正により変更される場合があります。受験資格の個別判定は公益財団法人社会福祉振興・試験センター、資格取得の助成制度は各都道府県・市区町村の窓口にご確認ください。
