介護職を辞めたいと感じたら、「仕事そのもの」と「今の職場」を分けて考えると判断が進みます。公的調査では今の仕事を続けたい人が58.3%、今の事業所で働き続けたい人が53.0%。仕事は続けたいが職場は変えたい層が一定数いるためです。
この記事でわかること
- 「辞めたい」を仕事・職場・働き方の3つに切り分けると、取るべき順序が変わること
- 今すぐ距離を取ったほうがよい状態と、環境調整で変わりうる状態の見分け方
- 介護職の悩みの内訳(人手が足りない49.1%、賃金35.3%、身体的負担24.6%)と、それぞれの打ち手
- 辞める前に職場の中で試せること(勤務日時の調整・異動・働き方の変更)
- 一人で抱えないための公的な相談窓口と、辞めると決めたときの順序
公的情報源: 公益財団法人 介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査結果の概要」(参照)/厚生労働省「こころの耳」(参照)/厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」(参照)/厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(参照)
すぐに辞める必要はありません。ただ、他の働き方を知っておくだけでも「今の環境しかない」という感覚はほぐれます。
結論を先に整理します
「辞めたい」という言葉には、まったく違う中身が入っています。介護という仕事自体が向いていないのか、今の職場がつらいのか、それとも今の働き方(夜勤・常勤・シフト)が体に合わないのか。この3つは混ざりやすく、混ざったままだと判断が進みません。
令和6年度の介護労働実態調査では、今の仕事(職種)を続けたい人が58.3%、今の事業所で働き続けたい人が53.0%でした。職種を続けたい人のほうが多い=仕事は続けたいが職場は変えたい層が存在することを示しています。
そして「わからない」と答えた人は、職種で20.6%、事業所で27.7%。決めきれない状態は珍しくありません。
- 「辞めたい」は仕事・職場・働き方のどれを指しているかで、答えがまったく変わる
- 今の仕事を続けたい58.3%/今の事業所で働き続けたい53.0%/別の法人へ転職したい9.9%
- 健康被害・ハラスメント・違法な運用は、時間や我慢では解決しない。距離を取る判断を優先
- 悩みの上位は人手が足りない49.1%・賃金が低い35.3%・身体的負担24.6%。環境調整で動く部分がある
- 職場定着に効果があった方策の1位は休暇取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり(34.4%)
「辞めたい」の中身を3つに切り分ける
同じ「辞めたい」でも、変えるべき対象が違えば方法も違います。まず自分がどれに近いかを見るところから始めます。

- 仕事そのものを辞めたい:介護という職種から離れたい
- 今の職場を辞めたい:介護は続けたいが、この事業所ではつらい
- 今の働き方を変えたい:仕事も職場も嫌ではないが、夜勤や勤務形態が体に合わない
データが示す「職種と職場のズレ」
令和6年度の介護労働実態調査で、今後の希望を聞いた結果は次のとおりでした。
現在の仕事・事業所に関する今後の希望(令和6年度・労働者調査)
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 今の仕事(職種)を続けたい | 58.3% |
| 介護関係で別の職種に就きたい | 4.2% |
| 介護・福祉・医療関係以外の仕事に就きたい | 5.5% |
| 今の事業所で働き続けたい | 53.0% |
| 今の法人内の別の事業所に転勤したい | 2.0% |
| 別の法人や企業などに転職したい | 9.9% |
出典:介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査結果の概要」
介護以外の仕事に移りたい人は5.5%にとどまります。一方で別の法人への転職希望は9.9%。この差が「仕事は続けたいが職場は変えたい」層の存在を示しています。
「わからない」が最も現実的な状態
職種について「わからない」は20.6%、事業所については27.7%でした。決めかねている人が4人に1人以上います。
つらい気持ちがあるのに答えが出ないのは、判断力が足りないからではありません。情報が足りないか、疲れていて考える余裕がないかのどちらかであることが多いためです。焦って決める必要はありません。
切り分けるための3つの問い
自分がどこにいるかを確かめる問いを置いておきます。
- 問い1:職場が今の3倍の人員体制だったら、この仕事を続けたいと思うか
- 問い2:同じ仕事を別の事業所でやると想像したとき、気持ちは軽くなるか
- 問い3:夜勤がなくなったら(あるいは日数が減ったら)、状況は変わりそうか
問い1がノーなら職種の問題。問い2がイエスなら職場の問題。問い3がイエスなら働き方の問題である可能性が高くなります。
今すぐ距離を取ったほうがよい状態
切り分けの前に、優先すべきことがあります。次の状態に当てはまるなら、判断より先に距離を取ることを考えてください。
心身に症状が出ている
眠れない日が続く、食欲が戻らない、休日も動けない、朝に動悸がする。こうした状態は「気合いの問題」ではありません。
介護労働実態調査の悩みでも「精神的にきつい」が22.5%、「健康面の不安」が19.4%と挙がっています。体調が落ちているときは、判断の質も落ちます。まず休むこと、必要なら医療機関を受診することが先です。
ハラスメントが続いている
労働施策総合推進法により、事業主にはパワーハラスメントの相談窓口設置を含む雇用管理上の措置が義務づけられています。2022年4月からは中小企業も対象です。
我慢して状況が改善する性質のものではありません。職場内の窓口、それが機能しないなら職場外の窓口へ。記録を残しながら相談を進めてください。
違法な運用が常態化している
残業代が支払われない、休憩が取れない、労働条件が書面で示されていない。こうした状態は制度上の問題であり、個人の頑張りで是正するものではありません。
勤務時間や指示内容の記録を残したうえで、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談するのが筋道です。この3つはいずれも、時間が解決しない領域です。
環境を変えれば続けられる場合
一方で、条件が変われば続けられる悩みもあります。悩みの内訳を見ると、その多くが環境側の要因です。

労働条件・仕事の負担についての悩み(令和6年度・複数回答/n=21,325)
| 悩みの内容 | 割合 |
|---|---|
| 人手が足りない | 49.1% |
| 仕事内容のわりに賃金が低い | 35.3% |
| 身体的負担が大きい | 24.6% |
| 精神的にきつい | 22.5% |
| 業務に対する社会的評価が低い | 20.2% |
| 有給休暇が取りにくい | 19.4% |
| 健康面(感染症・怪我)の不安がある | 19.4% |
| 休憩が取りにくい | 17.3% |
| 特に悩み・不安・不満等は感じていない | 14.1% |
出典:介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査結果の概要」
人手不足は「事業所の問題」
最多の「人手が足りない」49.1%は、個人の努力では動きません。ただし人員体制は事業所ごとに大きく違います。
事業所ごとの離職率を見ると、10%未満が53.6%を占める一方、30%以上の事業所も11.3%ありました。今いる職場の体制が、介護の標準というわけではありません。
賃金は施設種別と加算で変わる
「仕事内容のわりに賃金が低い」は35.3%で2位でした。給与は施設種別・資格・処遇改善加算の取得状況によって差が出ます。
今の水準が相場のどこにあるかを知らないまま、「介護は給料が安い」と結論づけている場合があります。給与の全体像は次の記事で整理しています。

身体的負担は施設タイプと働き方で変わる
「身体的負担が大きい」は24.6%。移乗介助の回数や入浴介助の負担は、利用者の介護度と施設タイプで大きく変わります。
夜勤の有無も体への影響が大きい要素です。負担の中身を分解すると、職場を変える以外の選択肢が見えてくることがあります。
辞める前に職場の中で試せること
転職は選択肢のひとつですが、最初の一手とは限りません。職場の中で条件を動かせるなら、そのほうが負担もリスクも小さいからです。
勤務日時の調整を相談する
介護労働実態調査で、職場定着に効果があった方策の1位は「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」で34.4%でした。事業所側でも実施率が最も高い施策(74.7%)です。
夜勤の回数、シフトの組み方、勤務時間帯。相談してみなければ、変えられるかどうかは分かりません。制度として用意されていても、申し出がなければ動かない仕組みは少なくありません。
法人内の異動を確認する
法人が複数の事業所を運営しているなら、異動という選択肢があります。調査では「今の法人内の別の事業所に転勤したい」は2.0%と少数でしたが、選択肢として認識されていないだけの場合もあります。
同じ法人でも、事業所が違えば人員体制も雰囲気も変わります。転職より手続きの負担が軽い点も利点です。
働き方の形を変える
常勤・夜勤ありという形だけが介護の働き方ではありません。日勤中心の通所系、パート、派遣といった形もあります。
一度負荷を落として、体調と生活を立て直してから次を考えるという進め方も現実的です。収入や雇用の安定性は変わるため、その点を含めて比べる必要はあります。
常勤で夜勤あり以外の働き方がどれくらいあるかは、実際の求人を見るのが早いです。日勤のみ・パート・派遣を含めて条件を確認できます。
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一人で抱えないための相談先
職場の中に相談できる相手がいないこともあります。職場の外に、無料で相談できる公的窓口があります。
介護労働実態調査では、介護関係の仕事を辞めた理由として「勤務先に仕事上の悩み事の相談ができなかったため」が6.7%挙がっています。相談先がないこと自体が、離職の要因のひとつになっています。
「相談するほどのことではない」と感じる段階でも構いません。判断そのものを相談してよいのが、これらの窓口の役割です。
辞めると決めたときの順序
考えた結果として辞めるなら、順序を守ることで次の失敗を減らせます。

在職中に動くほうが選択肢は広い
収入が続いている状態なら、条件を比べる余裕が残ります。逆に離職後は、生活の都合から早く決めなければならない圧力がかかりやすくなります。
介護分野は求人が動いている領域ですが、条件の差は大きい。急いで決めた転職が次の「辞めたい」につながるのは、比べる時間がなかったためであることが多いといえます。
辞めた理由を言葉にしておく
次の職場を選ぶとき、何が嫌だったかを具体化しておくと、条件の優先順位が決まります。人員体制なのか、夜勤の回数なのか、指導の仕方なのか。
漠然と「人間関係が悪かった」で終えると、次も同じ基準で選ぶことになりかねません。
短期離職を過度に恐れない
在職期間が短いことを気にする方は多いものの、介護分野では中途採用が一般的です。介護労働実態調査でも、中途採用者の直前の仕事は「介護関係の仕事」が37.0%を占めています。
理由を説明できる状態にしておくことのほうが重要です。体調、通勤、体制の不一致。事実として説明できれば、必要以上に不利にはなりません。
よくある質問
Q1:介護職を辞めたいと思うのは甘えでしょうか?
甘えではありません。介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」では、労働条件・仕事の負担について「特に悩み、不安、不満等は感じていない」と答えた人は14.1%にとどまります。裏を返せば、8割以上が何らかの悩みを抱えながら働いていることになります。最多の悩みは「人手が足りない」49.1%で、これは個人の努力では動かせない構造的な要因です。
Q2:介護職を辞めるべきかどうか、どう判断すればよいですか?
「仕事そのもの」「今の職場」「今の働き方」のどれを変えたいのかを切り分けるところから始めます。介護以外の仕事に就きたい人は5.5%にとどまる一方、別の法人へ転職したい人は9.9%。仕事は続けたいが職場は変えたい層が一定数います。ただし心身の不調・ハラスメント・違法な運用がある場合は、切り分けより先に距離を取ることを優先してください。
Q3:辞めたいけれど決心がつきません。おかしいでしょうか?
おかしくありません。同じ調査で今後の希望を「わからない」と答えた人は、職種について20.6%、今の事業所について27.7%でした。4人に1人以上が決めかねている状態です。決められないのは判断力の問題ではなく、情報が足りないか、疲れていて考える余裕がないかであることが多いといえます。まず休息を取り、他の職場の条件を知ることから始めるのが現実的です。
Q4:辞める以外に状況を変える方法はありますか?
あります。介護労働実態調査で、職場定着に効果があった方策の1位は「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」(34.4%)でした。夜勤回数やシフトの組み方は、相談することで変わる場合があります。法人が複数事業所を運営していれば異動という選択肢もあります。日勤中心の職場・パート・派遣など、働き方の形を変える方法も含めて検討できます。
Q5:辞めたいと相談できる相手がいません。どこに相談すればよいですか?
職場の外に無料の公的窓口があります。メンタル面は厚生労働省の「こころの耳」(電話・SNS・メール)、労働条件は各都道府県労働局・労働基準監督署内の「総合労働相談コーナー」(無料・予約不要)、介護分野に特化した相談は「介護労働安定センター」、ハラスメントは「あかるい職場応援団」が窓口です。相談するほどのことかどうかの判断自体を相談して構いません。
Q6:辞めてから転職先を探すのはよくないですか?
在職中に動くほうが選択肢は広くなります。収入が続いていれば条件を比べる余裕が残るためです。離職後は生活の都合から早く決めなければならない圧力がかかりやすく、急いで決めた転職が次の不一致につながることがあります。ただし心身の不調が強い場合は、体調の回復を優先する判断もあります。この場合も傷病手当金など利用できる制度がないか、事前に確認しておくと安心です。
Q7:短期間で辞めると次の転職に不利になりますか?
介護分野では中途採用が一般的で、必要以上に恐れる状況ではありません。介護労働実態調査によると、中途採用の介護労働者の直前の仕事は「介護関係の仕事」が37.0%を占めています。重要なのは辞めた理由を事実として説明できる状態にしておくことです。体調、通勤、人員体制の不一致など、具体的に説明できれば判断材料として受け止められます。
まとめ:介護職を辞めたいときは「何を変えたいのか」を先に決める
判断の順序を整理します。
- 「辞めたい」を仕事・職場・働き方に切り分ける。混ざったままでは判断が進まない
- 今の仕事を続けたい58.3%/今の事業所で働き続けたい53.0%/介護以外へ移りたい5.5%
- 心身の不調・ハラスメント・違法な運用は、切り分けより先に距離を取る判断を優先
- 悩みの最多は人手が足りない49.1%。これは事業所差が大きく、環境を変えれば動く部分
- 辞める前に勤務日時の調整・法人内異動・働き方の変更を試す余地がある
いま消耗しているなら、その状態で大きな決断をしないことが、いちばん確実な自衛策です。まず休む、次に切り分ける、それから動く。この順番が守れれば、判断の質は上がります。
辞めるかどうかを今日決める必要はありません。他の職場や働き方を知っておくだけでも、「ここしかない」という感覚はほぐれます。その状態で改めて考えたときに、答えが変わることもあります。
今すぐ動かなくても構いません。日勤のみ・パート・派遣を含めた条件を見ておくと、選べる範囲が具体的になります。
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免責事項
※本記事は執筆時点で公表されている厚生労働省および公益財団法人介護労働安定センターの統計・通知等の公開情報をもとにした整理であり、個々の事業所の状況とは異なります。労働条件・退職・ハラスメントに関する個別の判断は、各都道府県労働局の総合労働相談コーナー・労働基準監督署・介護労働安定センター・社会保険労務士など有資格者や公的窓口にご相談ください。眠れない・食欲がないなど心身の不調が続く場合は、医療機関の受診や厚生労働省「こころの耳」の相談窓口のご利用をご検討ください。
